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Converted by Falcon Hive

2010/10/15() 渋谷O-EAST

まさかボーカルNic Offerの“半ケツ姿”を拝めるとは夢にも思わなかった。おなじみのヒゲダンスは炸裂してはいたものの、ステージに登場した彼は昨年のWarp20の時と同じく半ズボンではなく普通のパンツ姿だった。そこから割れ目がSay Helloしていたわけだが・・・。Fuji Rock Festival '10ホワイトステージでの出演も記憶に新しい!!! (chk chk chk・チックチックチック)の東京公演は6月発売の新作「Strange Weather, Isn’t It?」の曲達を軸としたセットで進められた。転換期にさしかかったこのライブを目撃出来て筆者は今幸せな気持ちでアルバムを聴きながらレポートを書いている。


渋谷道玄坂2丁目。渋谷O-EAST。キャパシティは約1300。バルコニー席のある音響のよい狭すぎず広すぎずのいい雰囲気のハコだ。僕はここに来るのは10年前に来たSiam ShadeLive男気」以来である。前座はFuji Rock Festivalでの交流から今回の出演が決定したというLITE (日本)。空間を使ったタイトな演奏を見せるインストバンドだった。http://www.myspace.com/liteband
ZAZEN BOYSのプログレッシブさとキーンと張りつめた空気。心地よい残響を残し約30分間の彼らの演奏が終了した。

会場は1Fもバルコニー席もほぼ満員御礼。1955頃、既に客電が落ちブルーライトで照らされていた暗闇のステージから「AM/FM」のスローな演奏が響き始めた。フロントマンNicが登場。観客の注目をグイと引き寄せカモン、こっち来いよ!と手のひらを返しクイクイとこちらに向け煽り始める。ダウナーでドープなバイブレーションが辺り一帯を立ち込めアシッドなピアノがサイケデリアに花を添えた。エコーのかかったサウンドがしっとりとゆっくりと徐々に客の興奮を立ち上げていく。次の「Wannagain Wannagain」で少々テンポアップ。黒人女性VoShannonが右手から颯爽と登場しエモーショナルに歌いだした。そしてAllanSaxパートとNicのダイブ、次から次へと場面が切り替わっていく。この展開の早い曲構成がこの曲の疾走感を増幅させとても軽快な場面だ。「Most Certain Sure」ではサビでAnd it’s a good thing, it’s a good thingのコーラス。もう既に沸点到達するか否か?の様相。痛快なリズムでNickのヒゲダンスと腰の動きにも拍車がかかった。恍惚の表情でチンコに手をあてがい激しく手を上下左右に振る。こう書くと一見、おバカバンドに聞こえるかもしれないがここまでの新曲三曲は洗練されたディスコパンクショウの雪崩である。ただ単に馬鹿騒ぎするパーティーピープルとは一線を画していた。

歌モノ「Yadnus」では少しロックバンド然な演奏でしっかり歌う。と、思ったら間奏部でマイクを咥えて例の「あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛!!!」のスクリーム。まったりしてしまう間奏部でこういうキ○ガイ感覚を出せるのは個人的に大好きだ。テクニックが効いていてガツンと頭をぶたれたような目覚まし感覚がある(初期Green DaySheという曲に最終間奏部に突入した瞬間、Billyが雄たけびを上げる部分があるがあれに感覚が似ている)

!!!版のソウルミュージック「Steady As The Sidewalk Cracks」。コーラス部のShannonのボーカルをよく聞いているとしっかり馴染んでこの曲を物にしていると分かる。この曲の持つメロディックなフックをさらに強いものにしているなと。バンドのミクスチャー的要素を更に推し進めて、内包するジャンルを一つも二つも増やしているのは間違いない。ディスコ、パンク、ファンク、ロック、+ソウルミュージック。「音楽を信頼するんだ」という力強い歌詞がどこまでも可能性の広がる無限大なバンドに彼女が加入したことでなりえた事を宣言している様な気さえした。

T!-O!-K!-Y!-O! You guys are crazy Tokyo!!!」とMCNicが叫ぶ(その後にDo you like Roxy Music?と聞いたのはフジロックのVirginia Planeカバーへの反応の薄さを今頃、皮肉って聞いたのだろう)。「Jamie, My Intensions Are Bass」の長いアウトロから間髪なく「Must Be The Moon」が繰り出された。

Hollow」を経て、来た!とオーディエンスを歓喜させた「Me And Giuliani Down By The School Yard (A True Story)」。アルバム「Louden Up Now」収録の初期の名曲だ。あのアルバムは怒りに満ちた作品だった。この曲で言いたかったことは「クラブでのダンス規制」という当時のニューヨークの馬鹿げた法律に対する怒りだった。今現在、その矛先は変わっているのだろうか?としても今もこのバンドにパンクの血液が脈々と流れている事を表層化させ僕にまっすぐ拳を突き上げさせた。永遠に続いていくような終わりの見えない底なしジャムセッションのグルーブとコミカルなボーカルフェイクが皮肉屋!!!の裏返し表現となって相手に掴みかかるようだ。

The Hammer」は本当に最高にアッパーな曲だと思う。シンプルなフレーズ「Don’t Stop! Come On!」の繰り返しと押し寄せるダイナミックなサウンドが掴みかかってくる構成は攻め一辺倒で途切れることがない。強烈なダンスビートでもって心拍数がみるみる上昇していく。観客の反応が今日最高に目覚ましい。この重要なハイライトシーンを経て、本編終わりの「Heart Of Hearts」。Nicがバルコニー席まで上がってきて1Fの客を煽る。少々やりすぎ感が否めない場面だったがVo不在のステージの穴はその間Shannonが担う。ドラムロールに乗っかった彼女の「Haert Of! Haert Of! Heart Of」のフレーズの繰り返しが心地よい。タイトでドコドコドコドコと鼓動を揺さぶって体を力ませる。どのライブでもいつも思うのだが、ジャンプアップ&ダウンの嵐へ彼女が導かれて会場全体が浮き上がるのは圧巻の光景だ。

アンコール一曲目は1stアルバムから「Intensify」で突っ走った。その後、メンバー紹介を交えながら、Nickに促されて各メンバーが声を発する。「アリガトウゴザイマス!」「コンニチワ!!」とか面白味もないようなコメントだったがここまでのプレイで完全に掌握されているオーディエンスは温かく歓声で応えた。このライブで息つく暇があったとしたらこの場面くらいだったと記憶している。最終曲は飛び道具的な「All My Heroes Are Weirdos」で締めた。Shannonがダイブしてやはり彼らのライブはとどのつまりカオスだったとあらためて感じた。

筆者は残念なことに今までのFuji Rock Festivalでのライブを見た事は一度もなく、過去二回のelectraglide(2004年、2009)でのステージと比較することしかできない。その上で思った事は今の彼らは旧楽曲から意識的に距離を置くようにして次のステップへ一歩前へ進もうとする気概が感じられるということ。たとえ意図的でないにしてもそんな雰囲気が見てとれた。新作は「雲行きが怪しくないか?」と不安定な天気に例えてコントロールできないものに対する幻滅を例えた作品だ。結成メンバーの脱退、ドラマーJerry Fuchsの事故死、まさにここ数年の彼らの周辺での出来事を反映したような言葉である。このアルバムの新曲が披露されたのは昨年行われた所属レーベルWarp20周年記念イベント、electraglide presents Warp 20(2009/11/22・幕張メッセ)だった。

多くの新曲がセットリストを占拠することでライブの雰囲気自体がらりと変わっていた。「Pardon My Freedom」「Myth Takes」といった鉄板曲もやらないなんて。昨年の幕張でのライブをみた筆者の率直な感想だ。当時未発表だった新曲をセットに組み込み、さらにファンに浸透しているキラーナンバーを封印したそのライブを見て焦燥感とやきもきした気持ちがあった。そして今回の渋谷でのライブ。新作を発売しファンへ一歩先に進んだ大人のライブをプレゼンテーションできていた思う。!!!という個性の地力を得た、まさにその瞬間を目撃出来たのではないだろうか。洗練されたサウンドプロダクションの新作からのライブへの反映、彼らはただ単に暴れてわめき散らすような子供ではなかった。昨年の記念イベントをあくまで自分たちの成長過程の一環として捉え、スタイルを貫いたことがこの結果をもたらした。そして僕の中のエレグラでの不完全燃焼感はこの日完全に消え去ったのだ。ファンの本音を言ってしまえばそこにある人気曲を投下してくれれば間違いなくもっと盛り上がっただろうことは想像に難くない。しかし敢えて意識的にそれらを外して全体を通してのグルーブは新曲がリードする、ワンステップ上の次元で表現していくのだと彼らは決意表明したのだと僕は捉えた。そしてそれは今夜日本のファンに完成形となって堂々と見せつけることに成功していたのだった。次への期待の高まる意義あるギグであった。


Set List 2010/10/15(Fri) 渋谷O-EAST
1.    AM/FM
2.    Wannagain Wannagain
3.    Most Certain Sure
4.    Yadnus
5.    Steady As The Sidewalk Cracks
6.    Jamie, My Intensions Are Bass
7.    Must Be The Moon
8.    Hollow
9.    Me And Giuliani Down By The School Yard (A True Story)
10.  The Hammer
11.  Heart Of Hearts
~encore 1
12.  Intensify
~encore 2
13.  All My Heroes Are Weirdos

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